天使やカイザーと呼ばれて

QMK Firmware 2026-08 Breaking ChangesとRemapへの影響

· keyboard

結論:Remapは緊急対応不要、ただしSteno関連だけ壊れます

最初に結論を書いておきます。QMK Firmware の 2026 年 8 月の Breaking Change によって Remap - remap-keys.app が全面的に壊れる、なんてことはありません。ただし、Stenography(速記)関連のキーコードだけは表示や書き込みが正しく動かなくなります。Steno を使わない大多数のユーザー、つまり Remap 利用者のほぼ全員には運用上の支障は出ないかなと思います。

そう言い切って良いのか、実は結構ドキドキしながら QMK 側の変更を洗い出したので、この記事ではその調査結果を残しておきたいと思います。

QMK 2026-08 Breaking Changesの全体像

まず、そもそも QMK Firmware の Breaking Change とは何か、というところから。QMK Firmware は、およそ半年に一度 develop ブランチの変更が master ブランチにマージされ、それが公式リリースとして扱われます。ここに含まれる後方非互換な変更を「Breaking Change」と呼びます。

今回のマージ日は 2026 年 8 月 30 日、つまり本エントリを書いている今日です。マージされる主な変更は以下の 5 つです。

  • Stenography のリワーク(#26273 / #26421
  • VIA EEPROM 移行(#26321
  • Community Modules の永続化サポート(#26201
  • keycodes hjson の再構成
  • EXTRAKEY 範囲制限(#26295

このうち Remap から見て気になるのは、キーコード定義に触るものと VIA プロトコルに触るものです。実際に一つずつ影響評価を行った結果、Remap への影響があるのは Stenography リワークだけ、という結論に落ち着きました。

もちろん、VIA EEPROM 移行や Community Modules のような大きめの変更もあります。しかし、これらは QMK ファームウェア内部の話であり、VIA プロトコル自体は additive(追加のみ)で API 破壊はありません。つまり、Remap の HID 通信ロジックには影響しない、ということになります。

ちなみに、前回(2026-05-31)の Breaking Change で入った VIA プロトコル v13 についても、Remap 側の処理はそのままパスします。こちらは半年前にリリースされたものですが、Remap 側で追加対応は不要でした。

唯一の影響ポイント:Stenography

さて、ここからが本題です。Stenography 関連はどう変わるのか、Remap 側にどんな実害があるのか、順に見ていきます。

QMK 側の変更内容は、大まかにこんな感じです。

  • Steno キーコードの値の範囲が拡張された
  • 旧モード切替キーコード(QK_STENO_BOLT / QK_STENO_GEMINI / QK_STENO_COMB など)が削除された
  • 新しいモード切替キーコード(QK_STENO_MODE_BOLT / QK_STENO_MODE_GEMINI / QK_STENO_MODE_NEXT / QK_STENO_MODE_PREVIOUS)が追加された
  • 個別 Steno キー(N1NCS1S3TL / KL / PL / WL / HL / RLA / O / E / UST1ST4 など)が 40 個以上追加された

つまり、Stenography 周りは値の範囲もキーコードのラインナップも大きく作り直された、ということになります。

Remap を使っている Steno ユーザーの視点で、実害シナリオも整理しておきます。QMK 2026-08 以降のファームウェアに書き換えたキーボードを Remap で開くと、Steno モード切替キーは「不明なキーコード」として表示されてしまいます。逆に、Remap から旧 QK_STENO_BOLT を書き込んでも、新しいファームウェアではその値は Steno キーコードとしては解釈されず、無効な打鍵になってしまう可能性があります。

これはさすがに、該当ユーザーにとっては困る話です。「なんで急に Steno モードが動かなくなったの?」と数日悩む方が出ても不思議ではありません。逆に言えば、Steno を使っていないユーザーであれば、今回の Breaking Change を気にする必要はまったくない、ということになります。

Steno をお使いの皆様へのお知らせと今後の対応

では、Remap は今後どう動くか。ここからは実質的に、Remap で Stenography をお使いの皆様への告知を兼ねてお伝えします。

まず改めて、QMK 2026-08 の Breaking Change 以降のファームウェアに書き換えると、Remap 上での Stenography 関連キーコードの表示や書き込みは正しく動きません。Remap 側の対応は順次進めていきますので、しばらくの間、少しだけご不便をおかけします。

対応が完了するまでの間の回避策としては、以下のいずれかをご検討いただければと思います。

  • Remap 側の対応が完了するまで、QMK は Breaking Change 前のバージョンで運用する
  • どうしても新しいファームウェアで Steno を使いたい場合は、Remap 上ではなく keymap.c などの手動編集で対応する

Remap 側の作業としては、Stenography 関連のキーコード定義を新体系に置き換えるとともに、個別 Steno キーが大量に増える分、UI 側のカテゴリ表示も含めて丁寧に整理していきます。準備が整い次第、こちらのブログでも改めてご報告したいと思います。

もちろん、この機会に hjson からの自動同期といった仕組みも改めて検討したいところです。ただ、それはまた別の話ということにしておきます。

まとめ

今回は、QMK Firmware 2026-08 の Breaking Change が Remap にどんな影響を与えるのかを整理してみました。結論としては、Steno を使わないユーザーには影響なし、Steno ユーザーには表示・書き込みに影響あり、Remap 側は順次対応、といったところです。

Breaking Change が来るたびに「今度こそ Remap が壊れるんじゃないか」とドキドキするのですが、今回も蓋を開けてみれば影響範囲は限定的でした。QMK 側もキーコードの拡張は既存の値域の外側にきちんと配置されており、追加は additive、削除は明確、という良い設計になっているなと思います。

本エントリが、Remap をお使いの皆様や、QMK の Breaking Change を追いかけている自作キーボード界隈の皆様の参考になれば幸いです。


Ready
© 2005-2026 Yoichiro Tanaka