Google Developer Day 2008 Japan 基調講演

GDDの基調講演は、400人位が収容できるであろうホールに来場者がほぼ満員になるほどの盛況ぶり。他のイベントと違い、スーツはほとんど見受けられない。これもGoogle色と言えるのかも。 軽快な音楽と共に、Google日本法人村上社長が登場。今年のGDDでは、セッション数が増えたことと、コードラボが行われることが紹介される。僕的には、非常に日本的な挨拶という印象を受けたのだが、今日一日が始まったことを実感できる内容だった。 次に及川さんの登場。「次世代ウェブに向けて」というテーマで、先日行われたGoogle I/Oで伝えられたことを日本人向けにかみ砕いて紹介が行われた。メインフレームからPC、そしてインターネットという進化の中で、アプリの展開そして操作性などの点で、それぞれに利点と欠点があり、そしてGoogleが培ってきたクラウド環境は、まだまだ多くのユーザがアクセスできるように整ってはいない。つまり、今後の課題は、 「クラウドをよりアクセスしやすく」 「クライアントをよりパワフルに」 「コネクティビリティをユビキタスに」 であり、つまり「クラウド、コネクティビリティ、クライアント」の3つのCがテーマとなる。そして、オープンで標準に準拠した形は「オープンなウェブによるエコシステム」であり、オープンウェブプラットフォームとして、Google+ウェブ開発者、で標準化を進めて行く、ということが最初に紹介された。 ここから、3つのCそれぞれの紹介がスタート。まずは「クライアント」。これは、ローカルデータベース、ローカルサーバ、そしてワーカプールがキーワードになり、Gearsが実現する。実は名称が「Google Gears」から「Gears」に変更されており、HTML5に取り込まれる予定になっているとのこと。 次に「コネクティビリティ」。これはAndroidの紹介となるのだが、ここでAndy Rubin氏にバトンタッチ。Androidが見据えるモバイル市場において、現在では31億台のモバイル端末がネットに繋がっているにも関わらず、インターネットで起きた革命は未だモバイルにはきていない。Androidは、34社とのパートナーシップがポイントであり、各パートナーは5つのカテゴリに分けられる。ここで、Androidの実機でのデモンストレーションが披露された。アイコンを中心としたデスクトップが実現され、各種Widgetが動作し、完全なマルチタスクが実現されている。モバイルマッシュアップが特徴であり、アプリ間のコンテンツ連携ができる。実機に加速度センサーが搭載されていて、それに連動してストリートビューの表示が変わるのは、かなりすごいデモだと感じた。アドレス帳〜Maps View〜Street Viewと次々連携されていく姿は、Androidが現時点でも高品質な環境であることを実証しているようだった。 そして「クラウド」。これはGoogle App Engineの紹介であり、ここで鵜飼さんにバトンタッチ。Google App Engineを使うことで、クラウドが開発者に開放され、リッチなアプリを作ることができる。Webアプリは大規模になるまで継続して動かし続けることが最もコストがかかる部分であり、Google App Engineはそこを解決する。Google App EngineのAPIを使ったプログラムを記述し、SDKを使ってローカルでテストし、Google App Engineにデプロイ、という手順となる。Google App Engineへのデプロイは、ボタンを押すだけ。運用面では、管理コンソールを使って、アクセス頻度などのモニタリングをすることが可能とのこと。 Google App Engineの最新情報については、オフライン、多くの言語、リッチメディアアプリ(大きなファイルのサポート)、インフラの追加改善がキーワードとしてあげられていた。15万人がWaiting状態だったが、今はその制限は外されている模様。しかし日本は携帯キャリアの対応が遅れて現在アカウントを得られない状況なのだが、これは今週中に解決する見込み、とのことだった。 これらの3つのC以外に、「ウェブをよりソーシャルに」というテーマも掲げられる。iGoogle、Google Maps、YouTubeといった既存サービスのソーシャル化と、OpenSocial、Social Graph、FriendConnectといったソーシャルウェブのためのAPIが紹介された。OpenSocialは仕様策定が完全にオープンであることがここで強調される。 ここで、OpenSocialの実例としてリクルートの近藤さん・川崎さんにバトンタッチ。リクルートはOpenSocialにv0.5の頃から取り組んでいることが述べられ、そしてShindig上で動作している「ドコイク」サービスがデモンストレーションされた。これは、デベロッパー交流会第5回でデモされたものと同じ模様。「ドコイク」サービスの次期仕様としてAtomPubが検討されていたこともあり、OpenSocialとの親和性という点で魅力を感じたということだった。今後、Shindigコンテナの安定性や国際化に対する改善、そしてOpenSocialの仕様に関するより細かな明確化が望まれる、と川崎さん。リクルートとしては、オープンにエコシステムを作っていくための基盤としてOpenSocialを採用していく、とのことだった。 ここからは、デモンストレーションの連続。まずはGoogle Maps API for Flash。加速度センサーとUSBデバイスが搭載された回路がPCに繋がれ、その基盤の傾きに応じてGoogle Maps API for Flash内の地図が動く(フライトシミュレータのように)、はずだったのだが、肝心の地図がレンダリングされずに残念ながらその動作をみることができなかった。このデモは、Flashによって、ローカル資源による地図の操作ができることを伝えてくれるはずだっただけに、非常に惜しい結果となった。 次にGoogle Earth APIのデモンストレーション。ミルクを積んだトラックが地球上を走り回る、という内容で、これは見事に成功し拍手喝采。なんとトラックがエベレストを走っていた。ブラウザにプラグインで追加する形でGoogle Earth APIが利用可能になるので、これからGoogle Earth APIを使ったサイトを見る機会も増えていくことだろう。 地味なんだけど超利用価値Up!なものとして、Google Chart APIとGoogle Static Maps APIがRESTに対応した。これにより、欲しい条件をパラメータで指定したURLを発行するだけで、PNGやGIFの形式で結果が得られる。これによりAPIの利用に関しての手軽さは数段上がったはずだ。 今までは3つのCだったのだが、実は4つ目のCが潜んでいた。それは「コミュニティ」である。Googleは、あくまで土壌を提供するのであって、その上で草木を植えて育てるのはコミュニティである、という主張である。Googleは「Google API Expert Program」をスタートさせ、エキスパート認定されたサポーター(僕もOpenSocialのAPIエキスパートになりました!)を中心にして各APIでコミュニティを作っていく。Googleは、各コミュニティをサポートしていく、というプログラムである。 辻野さんより、「Be Social」という言葉が来場者に投げかけられ、会場全体がオープンな雰囲気になったところで、基調講演は終了となった。 一見すると統一感がなさそうなGoogleの各種APIだが、この基調講演によってかなり整理がされていることに気がつかれた方も多かったのではないだろうか。そして、3つのC+ソーシャル、というキーワードにおいて、Googleが目指している方向性がはっきりと見えた内容だった。そして、仕様策定が次々とオープンな土壌で行われ始め、オープンなコミュニティによって更に情報交換がされていく。Googleをより身近に感じることができたのではないだろうか。 ここまで内容が濃い基調講演も珍しい。あっという間の2時間だった。

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