スマートスピーカーはもう終わったデバイス?
Google が会話型アクションの終了を今年2022年の6月に発表してから、半年が経過しようとしています。
Googleアシスタント向け会話型アクションが1年後にシャットダウンされます
実際にシャットダウンされるのは、2023年6月13日です。来年の6月、意外とすぐにその日が来ると思います。
個人的にも「ああ、やっぱりか」と「えー、そんなー」という気持ちが入り乱れて、未だに心の整理がついていません。日々活用している会話型アクションがいくつかあるので、それがなくなった後どうしようかなぁ、と実際に困ってしまいそうなこともあったりします。
もちろん、Googleアシスタントが直接答えてくれることも多いです。しかし、3rd party によって作られた会話型アクションを使う機会も、そこそこあるんです。それがなくなってしまった後に、果たして Googleアシスタントはその穴を埋めてくれるのか、楽しみでもあり、不安でもあります。
CLOVAも終了のアナウンス
そんなGoogleアシスタントの動向に追随したのかしなかったのかわかりませんが、LINEもCLOVA Assistantサービスの終了がアナウンスされました。
CLOVA デバイス販売終了およびCLOVAデバイスにおけるCLOVA Assistantサービス終了のお知らせ
CLOVAの場合、3rd party によって作られたスキルだけでなく、CLOVAの音声応答機能自体が終了してしまいます。CLOVAデバイスに話しかけても、応答してくれなくなる、ということですね。ここはGoogleアシスタントと大きく違う点です。Googleアシスタントは、終了しませんので。
CLOVAは日本の市場における話かと思いますが、グローバルな話として、Amazon Alexaも何やらネガティブな話が伝わってくるようになりました。
Alexaに対するネガティブな噂
Amazon Alexaは「巨大な失敗」と社員が吐露、損失は年間1兆4000億円のペースに
Amazonが人員整理を予定していて、その中心的な対象がAlexa部門になる、ということが書かれています。それだけAlexaに対する投資を抑えるということであり、Alexaの今後の進化が鈍化あるいは何らかの機能がシャットダウンしていくのではないか、という想像をしてしまいます。もちろん現状では「Alexa部門の縮小が行われる【らしい】」という噂話ですので、本当かどうかはわかりません。
スマートスピーカーは終わったのか
これらのニュースを見て、皆さんはどう思いましたか?
特にAlexaの話がニュースに掲載されてから、「スマートスピーカーは失敗したデバイス」というようなことを指す表現を多く目にするようになりました。結局、音声を使ったサービスの提供という点においては、Googleアシスタントでは残念ながら市場を作れなかった、という結論でしょうし、Alexaにおいてもスキル開発をしても収益を得るのは非常に難しいという話を多く耳にします。
スキル(アクション)の開発をしてきた企業や個人の方々なら、なおさら「スマートスピーカーは結局失敗だった」という印象を持ったのではないでしょうか。その印象を持っている人にとっては、
- スマートスピーカー - スキル = ただの音楽再生スピーカー
- スマートディスプレイ - スキル = ただの音楽再生スピーカー + デジタルフォトスタンド
という変換がされたのかな、と想像します。
実際、CLOVAデバイスは「単なるBluetoothスピーカー」になるとアナウンスされています。完全に上記のような「ただの音楽再生スピーカー」となるわけです。
もっと高品質で高性能なスピーカーは家電ショップにいくつも販売されています。あえてスマートスピーカーを買う理由がなくなってしまった、というような印象を持っても、仕方のないことです。
スマートスピーカーは終わっていない
「単なるBluetoothスピーカー」になったCLOVAデバイスは、もうその通りなので、以降の話からは除外します。ここからは、GoogleアシスタントとAlexaのことを考えていきましょう。
大事なポイントとして、Googleアシスタントにおいて、来年2023年6月にシャットダウンされるのは、会話型アクション「だけ」です。
本当に大事なポイントなので、もう一度言います。
Googleアシスタントにおいて、来年2023年6月にシャットダウンされるのは、会話型アクション「だけ」です。
日本でも、グローバルでも、まだ普及しているとは言えない段階なので、皆さんの印象として薄い、あるいは限りなく「ない」とは思うのですが、GoogleアシスタントやAlexaは、会話型アクション(スキル)以外にも、実はサポートしているサービスがあります。
それは、「スマートホーム」です。
未来のことを表現したSF映画では、登場人物が声で指示すると、家電製品などが自動的に応答して、指示通りの動きをしてくれる、という風景がよく描かれています。まさにこれを目指したものが、スマートホームです。
Googleからは、「会話型アクションは終了します」とアナウンスはありましたが、「スマートホームは終了します」なんてアナウンスはされていません。
スマートホームの世界では、Matterと呼ばれている標準仕様があります。Matterは、Connectivity Standards Allianceによって検討が進められてきました。
Build With Matter - Smart Home Device Solution - CSA-IOT
すでにMatterはバージョン1.0に到達していて、以下の仕様が今年2022年10月4日に公開されました。
- Matter 1.0 Core Specification
- Matter 1.0 Device Library Specification
- Matter 1.0 Application Cluster Specification
Matterの仕様策定には、Google、Apple、Amazon などが参加しました。そう、音声アシスタントを提供している企業が参加しています。
この Matter が特徴的なのは、主要なベンダーがちゃんと参加して標準化を進めていることと、Matter に準拠した製品も同時に開発が進んでいることです。これにより、標準化が絵に描いた餅ではなくちゃんと広いカバー範囲になることと、仕様が絵に描いた餅ではなくちゃんと製品に採用されて実証されることが達成されます。
そして、Matterに準拠したデバイスを操作するための人間とデバイスとのインタフェースとして、もちろん音声アシスタントが想定されています。もちろん、スマートフォンアプリやPCでのウェブブラウザからも操作できますが、やはりスマートホームの実現のためには、音声アシスタントを使った声の操作や音声でのフィードバックは重要です。
もうわかりましたよね?
スマートスピーカーは、終わってはいません。むしろ、スマートホームを実現するための重要なインタフェースとして、これからが本番なのです。
まとめ
最近「スマートスピーカーは失敗だった」という意見を目にする機会が多かったため、このエントリを書きました。スマートスピーカーがオワコンと言ってる方々は、スマートスピーカーの可能性を部分的に見ているのかな、と思います。実は、スマートスピーカーは、これからのデバイスなんだ、今までは準備体操だったんだ、という捉え方をされたほうが正しいかなと思っています。
そして、フォトスタンドと化していたスマートディスプレイは、家電製品の現状を視覚的にモニターするためのインタフェースとして機能することになります。そう考えると、ディスプレイの存在理由が明確に理解できますよね?
というわけで、「スマートスピーカーは、これからのデバイスであり、そろそろもっと普及するんじゃないか」と僕は考えていますよ、ということを主張して、筆を置きたいと思います。