イメージすること

チーム開発では,チームの船頭的なポジションにつく人間によって,プロジェクトの成否が決定するといっても言い過ぎではない。かく言う自分も,年々まとめていくチームの人数が増えてきている。その分だけ,仕事の難易度は上がっていくし,責任も大きなものになる。チーム開発を成功に導くためには何が必要か,それは「イメージすること」を忘れないことだ。

僕はスキーヤーだ。冬は(昨シーズンは不本意だったが)ほぼ毎週スキーに行く。1級を取得したあとは,なかなか目に見えるだけのはっきりした技術の向上は難しくなる。外面的な運動よりも,内面的,つまり感覚的な運動の向上を図らなければならないからだ。より合理的,コンパクトな運動を行うためには,雪面から来る外力に対する感覚をより敏感に感じ,その感覚をもとに適切な運動を仕掛ける必要がある。「ひざの角度をもっと倒して・・・」などという外面的な手法では,技術は向上しない。

外力に対する感覚とそれに適切に反応するためには,常に先の状況を「イメージ」していなければならない。雪面から足裏に伝わる外力はもちろん,目から入力される雪面状況や,各関節が現在どのような形態になっているかを判断し,次の動作を「イメージ」し続ける。そして「イメージ」と実際の感覚とのズレを意識し,調整していく。

雪面状況やスピードの変化にすばやく対応するためには,とにかく「イメージ」を持っているかどうかが重要なのだ。イメージが感覚的に確かなほど,先の雪面状況にすばやく対応することができる。その結果,安定した滑りを行うことができる。

これは,チーム開発でも同じことだ。チームを率いることは,チームの状況や作業内容を常に「イメージ」し,その解決策もまた常に「イメージ」し続けることが重要なはずだ。チーム開発に関するあらゆる軸を把握し,その軸に対してメンバーがどのように携わるかを「イメージ」する。そして次の一瞬で何が必要なのかを「イメージ」しておくことにより,適切な判断と作業指示ができるようになる。もっと言うと,例えば1時間後にメンバーに作業指示を出している自分を「イメージ」するのだ。

「イメージ」することは,さまざまな材料がないと不可能な行為であり,結果として「イメージ」するための材料を自然と見つけてくるようになる。そして,何が足りないのか,何を得ておくべきなのかが,おのずと見えてくる。そしてそれらの優先順位に関しても,「イメージ」を繰り返すことで見つけることもできる。

きっと今の自分は,「イメージ」が足りない。目の前の問題解決に追われるだけではダメだ。常にチーム全体を「イメージ」することが必要だ。

今日,ある部下が「明日からメンバーに何をさせればいいの?」と僕に訴えてきた。部下は少なくとも明日の状況を「イメージ」しようとしている。涙がでるほど嬉しいことだが,同時に自分の「イメージ」力のなさを痛感した。これではいけない。チームを成功に導くために,日々「イメージ」をしていくことを忘れないようにすることが,メンバーへの最低限の責任だと思うようになった今日この頃である。

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