JSF+AjaxでUIコンポーネント開発 with Shale Remoting (8)

今回は,double-selectコンポーネントをレンダリングするDoubleSelectRendererクラスの解説を行おうと思う。その中で,Shale RemotingのAPIを使用してみる。

前回紹介したDoubleSelectTagクラスのsetProperties()メソッドによって,JSPに記述されたカスタムタグの属性値がUIコンポーネントにセットされる。DoubleSelectTagクラスが継承するUIComponentTagクラスは,setProperties()メソッドの呼び出し後に,コンポーネントをレンダリングするためにUIコンポーネントのencodeBegin()メソッドを呼び出す。double-selectコンポーネントが使用するUIInputクラスのencodeBegin()メソッドでは,faces-config.xmlにて関連づけられたレンダラクラスにレンダリングを委譲する。つまり,double-selectコンポーネントでは,DoubleSelectRendererクラスのencodeBegin()メソッドが呼び出される。

ds-rendering.jpg あ,ちなみに「レンダリング」=「エンコード」と読み替えて欲しい。どうもエンコードという言葉が分かりにくいだけの話なので,正確にはエンコード処理である。 DoubleSelectRendererクラスのencodeBegin()メソッドにて,double-selectコンポーネントを実際にレンダリングする処理を記述する。これは,Servletクラス内でHTMLの文字列をせっせと組んでストリームに送信していく処理にそっくりである。ページ全体を相手にするわけではないのでサーブレットのようにはならないが,それでも比較的泥臭い処理内容となるだろう。 具体的なレンダリング処理を紹介する前に,まずはdouble-selectコンポーネントのレンダリング結果を把握しよう。

  • (1)

  name=” Client ID:leftSelect”   onchange=”leftValueChanged(‘ Client ID:leftSelect’, ‘ Client ID:rightSelect’, ‘/test-ds/dynamic/ [rightSelectItems].faces’);”> - (2)

  name=” Client ID:rightSelect”> - (3)

  • (4)

大きく分けて,「double-select.jsファイル読み込み (1)」「左のコンボボックス (2)」「右のコンボボックス (3)」「初期選択肢取得処理登録 (4)」の4つから構成されている。 「double-select.jsファイル読み込み」は,scriptタグのsrc属性を使っている。ここでsrc属性値として指定しているものは,META-INF/jsディレクトリ下にあるdouble-select.jsファイルをShale Remotingを使って取得するためのパスである。これについては, 前のエントリで簡単に説明したので,ここでは省略。 「左のコンボボックス」は,一つ目のselectタグの部分である。id属性とname属性には,同じ文字列を値として指定する。ここでClient IDとは,ページ中に配置されたdouble-selectコンポーネントをJSFが扱うための識別子である。Client IDは,JSFがRestore Viewフェーズでコンポーネントツリーを構築する際に自動的に付与される。左のコンボボックスであることを識別するために,さらに「leftSelect」という文字列を追加している。例えば,myFormというIDを持つh:formタグ内にdouble-selectコンポーネントを一つ配置した場合は,JSFのSun RI実装(1.1_02)では,「myForm:_id0:leftSelect」というClient IDになる。 左のコンボボックスのselectタグには,更にonchange属性も記述している。これの値として,leftValueChanged()関数(double-select.jsファイルに記述される)の呼び出しを指定する。この関数は,3つの引数を指定する。順に「左のコンボボックスのid属性値」「右のコンボボックスのid属性値」「左のコンボボックスの選択肢を取得するためのリクエストパス」を渡している。特に3番目のリクエストパスは注目である。これは,Shale Remotingを使ってJSFの管理下にあるManaged Beanのメソッドを呼び出すためのパスである。 Shale Remotingを使ってWebブラウザから「bean1」という名前のManaged Beanオブジェクトが持つgetInfo()メソッドを呼び出す場合は,以下のように記述する。正確には,Webアプリケーションのコンテキストパスも先頭に付与する。

/dynamic/bean1/getInfo.faces

この第3引数のリクエストパスは,leftValueChanged()関数内で選択肢を得るための非同期通信を行う際に利用される。 このリクエストパスは,DoubleSelectTagオブジェクトによってセットされたleftSelectItems属性値を元に作成する。leftSelectItems属性値は, 前のエントリではメソッドバインディング式として記述されていた。これを「/dynamic」で始まるリクエストパスに変換してleftValueChanged()関数の引数とする。

mb2sr.jpg ここで,簡単にShale Remotingの動作を紹介しておこう。

shale-remoting-dynamic.jpg /dynamicで始まるリクエストパスをRemotePhaseListenerオブジェクトが受け取った場合,MappingsHelperオブジェクトはMethodBindingProcessorオブジェクトをRemotePhaseListenerオブジェクトに提供する。MethodBindingProcessorオブジェクトのprocess()メソッドでは,リクエストパスからMethodBindingオブジェクトを生成し,それを使ってManagedBeanオブジェクトのメソッドをinvokeする。

MethodBindingProcessor.jpg その後,FacesContext#responseComplete()メソッドを呼び出して,JSFのフェーズをここで完了する。 「右のコンボボックス」については,左のコンボボックスを構成するselectタグとほぼ同様。ただし,onchange属性は必要ないので出力しない。また,id属性とname属性の値として,右のコンボボックスであることを識別するために,「rightSelect」という文字列をClient IDに追加する。 さて,最後の「初期選択肢取得処理登録」。double-selectコンポーネントは,左右のコンボボックスの選択肢をレンダリング時には出力しない。選択肢は,double-selectコンポーネントが配置されたページの読み込み完了時に非同期通信を行って情報を取得し,JavaScriptでoptionタグを動的生成する。そのための関数がloadLeftSelectItems()関数(double-select.jsファイルに記述)であり, prototype.jsが提供する Event.observe()関数を使ってloadLeftSelectItems()関数をwindowオブジェクトのloadイベントハンドラとして登録する。 loadLeftSelectItems()関数の第3,第4引数に指定するリクエストパスは,leftValueChanged()関数の時と同様に,メソッドバインディング式を/dynamicで始まるリクエストパスに変換して引数値とする。 ここで突然prototype.jsが登場したが,prototype.jsはdouble-selectコンポーネントには含めない。Webアプリケーション全体でprototype.jsファイルは使用されることが想定されるため,double-selectコンポーネントはprototype.jsが使用可能な状態になっていることを前提とする。今回のサンプルでは,test-dsプロジェクト側でprototype.jsを準備する。以下のディレクトリに, prototype.jsファイルを配置して欲しい。 ・[Eclipseワークスペース]/test-ds/src/main/webapp/js 今回はレンダラクラスの内容を紹介するつもりだったが,思ったよりもレンダリング結果の説明が長くなってしまったので,次回に持ち越しとしよう。うーん,なかなかJavaコードの説明にならないな。。。

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