3Dギプスがぽんずを救った話
このブログエントリでは、我が家で飼っているポメラニアン(名前は「ぽんず」)が前足を骨折し、手術も入院もせず、3Dギプスによりわずか1ヶ月で全力ダッシュができるまでに回復した話を紹介します。
2025年1月25日生まれのポメラニアン(メス)を2025年4月から飼い始めました。名前は「ぽんず」、超小型犬で、最初は抱っこしても何も持っていないような、それほど軽く小さいパピーでした。家に来た当初は600g台だった体重は、6月には1.5kgほどになり、順調に成長していました。
2025年6月20日 - 骨折直後
6月21日に京都で「Google I/O Extended 2025 in Kyoto」があり、そこで僕は登壇すべく、京都に前日入りする予定でした。そんな6月20日の朝、荷造りで目を離していたときに、尋常ではないぽんずの鳴き声が聞こえました。
目を向けると、その先には「片足を上げて泣き叫び続ける」ぽんずの姿がありました。直後に「折れた!」と叫んだのを覚えています。
その数日前から、座椅子経由でテーブルに飛び移れるようになってしまい、テーブルから降りれずに困る、っていうことが数回ありました。でも、20日の朝は全くそのことに気が向いていませんでした。
おそらく、テーブルからフローリングに飛び降りた際に、左前足の骨が耐えきれず、折れたんだと思います。
荷造りなんてしている場合ではなく、すぐに家の近くにあるかかりつけの獣医さんのところに向かいました。
2025年6月20日 - 最初の動物病院にて
診察室に入って獣医さんが足を触った直後に、「骨折だね」と言いました。レントゲンを撮るのを待っている間、僕は「骨折はよくあることだろうし、時間がたてば治る」って楽観視していました。
しかし、レントゲンの結果を見ながら、獣医さんは以下のことを説明してくれました。
- ポメラニアンの前足の骨は、割り箸程度の太さしかない。
- 手術で固定しようにも、骨が細すぎて、固定するためのピンなどを適用できない。
- うまく固定できたとしても、まっすぐつながるとは限らない。足が曲がってしまって、歩けない可能性も高い。
- そもそも固定できたとしても、骨が接合しない可能性も十分に考えられる。
- 最悪の場合、切断もあり得る。
- 小型犬の前足の骨折は、世界的にも「治せない」という認識である。
話を聞いている間、数分前まで楽観視していた自分に腹が立ってきました。「絶望ってこういうことを言うのか」って、そのときは思っていました。
「大学病院を紹介することもできるが、腕の良い獣医がちょっと前に異動してしまった」なんて話も聞き、「詰んでるじゃん…」と、呆然とするしかなく、少し沈黙があったのを覚えていますが、気が動転していたので、定かではありません。
骨折したままの愛犬をそのまま自宅に連れ帰るしかないのか… と思っていたときに、獣医さんがノートPCに映し出された「ある病院」のウェブページを表示しながら言いました。
「でも、この病院なら治せるかもしれない。うちの患者さんで、大学病院を紹介した後にこの病院に行って治ったという話があるんです。その病院は、最先端の治療を研究しています。」
その先生の話を聞き終わって、すぐに僕は聞きました。
「もう治せるならその病院しかない、すぐにそこに行けってことですね?」
「そうです」と先生が言いました。まだ直接紹介したことがないとのことでしたが、すぐに電話をしてもらって、診てもらえることになりました。
その病院は千葉県柏市にあり、車で1時間30分もあれば行ける距離です。すぐにその病院に向かって、移動を開始しました。
上の写真は、移動中の車内でのぽんずの様子です。車が揺れるたびに悲鳴のような鳴き声を出し続けていて、つらいドライブでした。
2025年6月20日 - いしじま動物病院にて
なんとか午前中の診察に間に合いました。その場所は「いしじま動物病院」です。
普通の個人がやっている動物病院のような感じです。しかし、すぐに目に入ってきた「3Dギプス骨折治療センター」という文字に、もうここに期待するしかないと強く思ったのを覚えています。
すぐに診察室に呼ばれて、まずはレントゲンを撮り直しました。その間に手続きをしていたのですが、問診票に書くべき自分の携帯の電話番号が全く思い出せず、こんなにも自分が動転していたのか、とそこで自覚しました。
再度診察室に呼ばれた後、先生が発する言葉は、どれも衝撃的でした。
- 治ります。簡単です。
- むしろ、治りやすいです。
- 完治の時期を予測できます。7月20日です。
- あっという間ですよ。
「えー、1時間前に絶望的な話を聞いてるんですけど…」ととっさに言ってしまったのですが、「あ、そうだったんですね、いや、治りますよ。骨折は治って当たり前です。」とのこと。あまりにも淡々と、でも言い切るので、すぐに脳の中で消化できない自分がいました。
そして、治療の手順の説明を受けました。
- 最初の1週間は炎症期で、ケージで安静に過ごす。ただ、少し歩くくらいなら大丈夫。
- 2週間目からは修復期で、3Dギプスをつけて過ごす。めっちゃ歩いて、めっちゃ走って、めっちゃ刺激を与えれば与えるほど、早く治る。
- 1ヶ月後に、3Dギプスを外して、完治。
「絶対安静なし」「入院なし」「手術なし」「めっちゃ動け」
これら全部、逆だと思ってました。本当に骨折した子犬に対する治療?
完全固定ギプスをつける際に、折れた骨をある程度まっすぐにするために、足を伸ばします。当然激痛なわけですが、強く痛がったのはこれが最後で、2日後にはほとんど痛がることはなくなりました。
上の写真は、帰りの車の中でのぽんずです。表情が「無」です。
2025年6月21日 - 安静開始
最初の1週間は、安静期間でした。基本的には普段から寝てる時間が多いので、いつも通り寝てたって感じです。最初は寝返りをうつたびに痛みがあったみたいですが、次第にそれもなくなりました。
安静と言っても、歩けないわけではなかったです。ベッドからトイレまでは自分で歩いてましたし、何よりも、おしっことウンチを自分でちゃんとできたので安心しました。固定された足を軸にして、器用にクルクルしてました。
ちょうどワクチン接種3回をクリアして、散歩ができるようになったタイミングだったので、散歩につれていけなくなったのが残念でした。ぽんずもこんな感じに…
この週は、ちょっと心配だったので、夜は妻と交代でぽんずと一緒に寝てました。
2025年6月27日 - 3Dギプス装着
骨折から一週間後、いよいよ3Dギプスの装着です。午前中の診察時間にぽんずを預けて、午後の診察で3Dギプスを装着したぽんずを迎えます。
3Dギプスは、思っていたよりもずっと薄くて軽そうなものでした。今まで覆われていた足先が露出されて、肉球で床の感触を確かめられるようになりました。
上の動画は、3Dギプスを装着してもらった次の日のぽんずの様子です。まだ骨折した方の足を上げながら遊んでいる感じです。とはいえ、散歩も再開しましたし、リビングに放って自由に遊ばせることも再開しました。
2025年7月1日 - 3Dギプス装着5日目
遊んでいるときは、骨折した足を床に着く頻度が増えてきた感じですが、まだ走る際には足を上げて3本足で走ってます。
2025年7月4日 - 診察日
レントゲンを撮って、経過を確認しました
折れたときの様子とは明らかに違っていて、骨がくっつき始めているのが(素人目にも)わかります。さらに、明らかに折れた箇所が太くなっています。この時点では、まだ骨が柔らかいそうです。
どんどん散歩で歩かせて、走らせて、垂直方向の刺激を与えていきましょう、そうすれば早く治ります、と先生から伝えられました。順調に回復していることを確認できて、ホッとしました。
3Dギプスを縦に切って、少し調整をした後に、また足に戻しました。腫れ具合や毛の生え方などで太さが変わるため、フィットさせるように調整した模様です。
上記は自宅に帰ってきてからのぽんずの様子です。骨折前と同じような動きです。明らかにキレが戻ってきています。着地したり走ったりする際にも、両足を使う頻度が増えてるのがわかります。
ぽんず、これで本当に骨折してるんだろうか… って思ってしまうくらいの動きです。
2025年7月13日 - 3Dギプス装着17日目
11日に診察があり、あと1週間で3Dギプスを取れるでしょう、という評価でした。下の動画は、その2日後となりますが、最初に比べて、ほとんど4本足で走れるようになってきているのがわかります。
2025年7月18日 - 3Dギプスが外れた日
骨折からちょうど4週間が経過し、3Dギプス装着からちょうど3週間のその日、レントゲンを撮って、最終確認が行われました。
元の骨の2倍程度の太さで接合されているようです。骨は2本あって2本とも折れていたのですが、現在はそれが1本にくっついています。今後1~2ヶ月かけて、骨の太さは元通りに戻っていき、ちゃんと2本の骨になるそうです。不思議すぎる。
これで完治です、ということで、3Dギプスを外すことができました。エリザベスカラーも外してみたのですが、骨折していた足を30分以上必死になめ続けていたのと、足の付け根がちょっと赤くなっていた(たぶん皮膚炎)ので、数日はまだエリザベスカラーをつけておくことにしました。
2025年7月20日 - 3Dギプス外して2日目
完治宣言から2日目の朝の様子です。しっかりと4本足で歩けてますし、散歩でも元気に走ることができています。
毛がまだ戻っていないので、見た目は折れた方の足がめっちゃ細く見えます。そのため、脆弱に見えて「再骨折怖いなぁ」って思ってしまいます。でも、実際触ってみると、折れた方の骨の方が太いんですよねー。
エリザベスカラーをまだつけていますが、それ以外は骨折前の活発な動きになりました。
まとめ
骨折当日は本当にドキドキしましたし、絶望してました。しかし、近くの獣医さんが「いしじま動物病院」の存在を知っていたからこそ、今のぽんずの元気さがあるわけです。感謝してもしきれません。
数年前だったら3Dギプスの治療法はなかったわけで、それを考えると、ゾッとします。いしじま先生が毎回言っていた「(治すのは)簡単です」「あっという間ですよ」「骨折は治って当然です」って言葉にどれだけ安心したか… 素晴らしい先生と治療法に出会うことができたと思っています。
そして、「なぜこの治療法が全国各地で当たり前のように受けられないのか」「なぜこの治療法が第一の選択肢になっていないのか」、大きな疑問です。何ででしょうね…?
このブログエントリが、今後うちのぽんずと同じように骨折してしまった愛犬を救うためのきっかけになってくれるとしたら、本当に嬉しいです。