LINE社を退職します

明日はNHKおかあさんといっしょで「たくみお姉さん」から新しいうたのお姉さんにバトンタッチされる日です。そして、2013年3月にLINE社の社員証をゲットしてからもう3年が経過しましたが、僕はLINE社を退職します。今日3月31日が最終出社日で、在籍自体は4月末までです。

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「LINEのプラットフォーム化に力を貸して欲しい」と誘われてから今まで、まあ速かったです。もう3年も経っちゃったのか、という印象しかありません。それだけ内容が濃かったのか、いろいろやること多すぎてずっとテンパってたのか、自分でも良くわかりません。「入社したのがつい昨日のことのようです♪」なんてことはさすがにありませんが、例えばOpenSocialやり始めてからは、もう8年も経過してるんですよ。そりゃ年取るわけです。もう41歳だし。

入社したときにはLINE Platformの原型は既に開発されていて、しかし全然まだまだの状態で、まずはとにかく目の前にあるソースコードを隅から隅まで熟読し、実際に試し、足りないところやもっと良くするためには何が必要か、そして脆弱なところを洗い出し・・・というスタートでした。エコシステムをちゃんと回すためにはいろいろと準備しなければならず、それは例えば開発者向けのアプリ管理ウェブサイトであったり、各機能を利用するためのドキュメントだったりをせっせと準備していきました。

その成果は、LINE Developersというウェブサイトで現在は誰でも閲覧できます。ここ半年は僕以外の誰かがページを作っているのですが、現在でも8割程度は僕が書いたドキュメントです。はい、英語やばいですね、すみません。

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ホント手探りで始めましたが、でも前に進めないといけないので、とにかく「遠慮は悪」と思っていろいろな人から話を聞き、議論し、そして成果を形にしていく、ということを続けました。いつの間にかLINE Platformに誰よりも詳しくなり、その結果「とにかく洋一郎さんに聞けば何とかなる」という状況になってしまって、自分の首を絞める結果になったことは良い思い出です。というか、やっぱり役割を定義して組織を作っていくことの重要性を痛感しました。何でも屋になることは良いこととは言えないかもな、というのが学びです。まあ、その当時はLINE Developer Awardを得ることもできたのですが、これはエンジニア全員からの投票の結果だったりするので、普通の人事評価よりも、こっちの方が認められてる感が大きくて嬉しかったですね。

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LINE社に入社してからは、スマートフォンが前提になったため、入社前まではスマートフォンの世界を結構敬遠したこともあって、苦労しました。知識不足はホントやばかった。「安心安全なプラットフォーム」がモットー(?)でしたから、自分の中ではいろいろと日々勉強な感じでした。入社したときはLINEのユーザ数が1億を超えたあたりだったんですけど、今や非公開(公表してたのは確か6億か7億くらいまで)になってしまいましたが、やはりその人気が広がるに従って、いろいろな企画がどんどん出てくるわけで、攻めと守りのバランスを取るのが自分の役目かなと勝手に定義して、ちょくちょく口を出させていただきました。そんな僕をほとんどのLINE社員の方々は優しく応対してくれたことに感謝しています。もしかしたら嫌われてたかもしれませんが。

ソーシャルなスマホアプリを支えるプラットフォーム、という点ではmixi Platformで既に手がけていたものだし、それだけでは自分としては物足りなかったのですが、BusinessConnectを生み出すことができたのは、自分としては大きな成果かなと思ってます。簡単に言うと、公式アカウントをBOTにする仕組みなのですが、既にLINEのバックエンドサーバやAPIサーバが持っていた機能をうまく組み合わせて整合性を持ったアーキテクチャを短時間で考え、それを形にできたかなと。もちろん、その土台が他のエンジニアによっていろいろ開発されていたわけで、そういう意味ではみんな先見の明を持った人達だったなと思います。まさかAIで女子高生BOTが登場するとは思ってもみませんでしたが、株価が照会できたり年賀状が作れたり荷物の配送状況を知ることができたりピザを頼めたり車と会話できたりバイトを探せたり旅行を勧めてくれたりスタンプ77万個で東京タワーが光ったりコールセンターの代わりになったり、とにかくとにかくメッセージングアプリの可能性はみんなが考えているよりも大きいんだ!ということを証明することはできたのかな、と勝手に自負しています。

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LINEに入社した動機が「ゲームではなく、実用的なサービスがいくつも乗っかって、ユーザの実生活で役に立つ価値が今までよりもどんどん増えていくプラットフォームを作りたい」だったので、このBusinessConnectはこの僕の小さな夢が実現したと思ってます。

このBusinessConnectの仕組みは今まで公式アカウントを開設する企業のみが利用可能でした。というか、LINE Platformは全体的にかなりClosedな印象があったと思いますが、僕もそう思います。LINEに入社してから今日に至るまで、とにかく「オープン化まだかよぉ〜」と言われ続けました。この前もFacebookの「Messenger Bot Store」が、App Store以来の大革命となるかもしれないのコメントの中で徳力さんが、

日本は当然LINE上が主戦場になるはずだけど、LINEはFacebookに比べると垂直統合型のクローズドなプラットフォームという印象が強いのが日本のアプリ開発者にとっての課題ですよね。 日本のアプリ開発者がmixiよりもツイッターやFacebookのAPIの方が使いやすくてそっちに走ってしまったのと同じことが、LINEとFacebookメッセンジャーでも発生する可能性は十分あるし。それが日本におけるLINE一人勝ち構造にとっての蟻の穴になる可能性もある気がするので、LINEには是非もう少しオープンな展開に出て欲しいところ。

と書かれていて、「うん、まあ、そうだよね」と思いましたが、3月24日に行われたLINE CONFERENCE TOKYO 2016では「オープン」というキーワードの元に、BOT API Trial Accountという開発者向けにBOTを試しに開発できる環境を提供することが発表されましたし、これからどんどんLINE Platformに関わる人の数は増加していくと思います。LINE Platformが皆さんにどんどん近づいていくためにいろいろ考えなければいけないこと、解決すべきこと、達成しなければならないこと、などなどをこの3年間で僕は取り組んで来たつもりなので、僕も今後のLINE Platformの発展を期待して外から見守りたいと思います。

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こんなことを書いているうちに、Microsoft社が//Build/にて「Microsoft Bot Framework」なるものを出してきましたね。FacebookがMessenger Bot Storeを出すとか出さないとか記事になっていましたが、これから戦争が激化しそうな予感がしますし、自分がやってきた方向性がそれほど間違ってはいなかったのかな、と証明してくれてる気がして、個人的には嬉しい気持ちです。

この7年間、ソーシャルアプリケーションプラットフォームというテーマでずっと取り組んで来て、mixi PlatformLINE Platformという大きな2つのプラットフォームを生み出すことができました。一人ではもちろん無理ですし、多くの人々の知恵と根性(?)が詰まった成果であり、それをリードできたことは本当に僕にとって大きなことであり、そして共に取り組んでくれた全ての方々に感謝しています。自分で言うのも何ですが、日本の中でもこの経験を持つことができている開発者ってそうはいない、きっと数人程度だと思っていて、でも同じことをしたいと考えている企業はとても多いと思っています。どうしたら同じようなプラットフォームを作り、そして運用していけるのか、その全体像はその数人の頭の中にしかない状況だと思うのですが、近い将来僕の経験を共有知というか、形式知というか、何か見える形でまとめてみたいなと思っています。こうご期待と言うことで。できるかわかんないけど。もし「プラットフォーム作りたいんだけどどうしていいかわかんないし」とお悩みの方がいらっしゃいましたら、気軽に声をかけてください。お力になれることがあるかもしれません。

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さて、4月中はまるまるお休み期間とさせていただいて、5月から社会復帰する予定です。昨年の前厄は帯状疱疹になったり憩室炎で入院したりと散々でした。今年は本厄なので目標としては「健康で今年を過ごしきる」なのですが、環境も変わりますし、ワクワクドキドキしてます。今までなかなか外に出歩けなかったのですが、今後はいろいろな場所に顔を出していきたいと思っていますので、今後とも引き続きお付き合いいただけると本当に嬉しいです。

LINE社の中の僕と関わった全ての方々へ。楽しかったです。ありがとうございました。あまりお酒は好きではないので、声かけますので、ランチでもして思い出話をさせてください。「えー老害来んな」だなんて言わずにお願いいたします。

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上2つのLINE社内で撮った写真は、我らが941さんに撮影してもらいました。ありがとうございます。最後のお願い仕事がこんなんですみません。

LINEの中はJavaばっかりなので、締めの言葉としては以下になるのかな、と思います。

}

いや、あまりにも、か。以下かな。

System.exit(0);

0なんで、正常終了ということで。

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