Ender-3 V2の押し出し部品を替えました

前回の Ender-3 V2のチューブを切ってみました エントリでは、フィラメントが先端に詰まってしまったチューブを切断して詰まりを解消した話を取り上げました。

これで印刷が安定する!と期待していたのですが、結果はNGでした。相変わらずフィラメントが1層目の出力途中で出なくなってしまい、ノズルが宙を舞うのみとなってしまいます。そして、出なくなる前も、出力されたフィラメントがかすれたり、ノズル付近でアフロになったりして、ベッドに定着してくれないこともしばしばでした。

この段階に来ても、ノズルがまだ詰まっているんじゃないか、とホットエンド側の不具合を疑っていました。さらに、z-offset 値が悪いから定着しないんじゃないか、定着が継続してくれないからフィラメントがかすれるんじゃないか、とも想像していました。

この時点で、本当に心が折れそうになっていたと言うか、もっと高い3Dプリンタに買い換えようとも考え始めていまいた。

疑うべきは押し出しだった

1層目の出力途中にフィラメントが出なくなってノズルが宙を舞っている時に、本当に偶然なのですが、ふと「フィラメントを押し出す部品についている青いダイヤル」に目が止まりました。

その青いダイヤルは、ゆっくりと回り続けています。つまり、フィラメントを押し出し続けています。

でも、ノズルからは、フィラメントは一切出てきません。

「あれ?押し出されたフィラメントは、どこに行ってるんだ?」

突然頭の中にこの疑問が浮かびました。熱せられて蒸発してる?そんなバカな。

・・・そう、ここで閃きます。「フィラメントをちゃんと押し出せていないんじゃないか」と。

我ながら気がつくのが本当に遅いのですが、ノズルからフィラメントが出てこなくなった状態でダイヤルが回り続けているっていうことは、押し出しに使われているギアが空転してるってことなんですよね。ちゃんとフィラメントに噛んで押し出す力が伝わっているとするならば、今度はモーター側に負荷がいってしまっているはず。モーターが発熱して、煙や火が出ててもおかしくない状況です。そこまでいかなくても、押し出せずに「カチッ、カチッ」と回転が逆転する音が聞こえてきてて良い状況です。

つまり、ギアの歯が摩耗してしまったか、歯と歯の間にゴミがたっぷり詰まったか、何らかのギアの不調で押し出し力が落ちてしまっているんじゃないか、ということです。

ずっとホットエンド側を疑っていましたが、原因はそこではなく、押し出しにありそうです。

ギアを掃除して付け直す

原因がギアにありそうだ、とあたりをつけたので、さっそくギアを取り外します。そして、状況を見てみると、確かにちょっとゴミがたまっていそうです。フィラメントの細かな粉塵が、歯と歯の間に結構存在しているように見えました。

そこで、エアースプレーでゴミを吹き飛ばしてみました。そして、ギアの取り付け位置(軸の上下方向のどのあたりにつけるか)についても、反対側の金属の回る部品とちょうどよくなるように調整してみました。

そして、再出力してみます。

見事に復活!1層目がキレイに出力されました。そのまま出力を継続させた結果、

最後まで無事出力できました!

結果としては、チューブの先端にフィラメントが詰まっていただけでなく、フィラメントの押し出しのためのギアにも問題があった、ということのようでした。

では、これでめでたしめでたし、とは残念ながらいきませんでした。実は、もう一つ出力しようと思って試したところ・・・問題が再発しました。また「フィラメントが途中で出なくなる」問題が再び僕を襲いました。

タイミングよく到着した救世主

「なんでー!?今度はなんだよー!?」と途方に暮れていたときに、玄関のチャイムが鳴りました。宅配便です。

Ender-3 V2 のフィラメントを押し出すための部品は、買った時はプラスチックで出てきています。これが「使っているうちに割れてしまう」という話は、いくつかのブログエントリにて目にしていまいた。そのため、どうせいつか壊れるなら先に交換しておくか、と思い、実はアルミ製の交換部品を注文しておきました。それが、タイミングよく家に届きました。

Saipor アルミニウムMK8押出機 ドライブフィード 1.75mmフィラメント 押出機

触ってすぐに「これは硬そうだ」とわかる部品です。

どうせ出力が安定せず原因もわからなくなってしまったので、さっそく交換に取り掛かりました。

まず、ホットエンドにつながっているチューブのノズルを取り外します。

次に、ネジを一つずつ外していきます。まずは左上。

次は、フィラメントの抜き差しの際に使う取っ手の固定ネジを外します。

この取っ手のネジを外すと、取っ手が外れます。

バネも外しておきます。

バネのガイド的役割をしていたネジも外します。

取っ手を外した結果見えたネジも抜きます。

残りの一つのネジも外します。このネジを外すと、下についているモーター部も外れますので、モーター部が下に落ちないように持ったまま、ネジを外します。

外れました。

モーターを下に置いておきます。

さて、これで元の押出部の台座部分も外れました。

今この写真を見てみると、右側の真ん中あたり(指のちょっと上)に横にスジが入っていますね。実は割れていたんじゃないか疑惑があります。

ここで、取り外したノブの部分の滑車的な部品を外してみました。

あれ、もしかして。。。

実は「すでに割れていた」というオチとなりました。パックリと割れています。この状態でさっきは良く最後まで出力できたな、と不思議に思います。これじゃあフィラメントが押し出されないはずですね。

いろいろなトラブルのほぼ全てが、このノブの破損が原因だったと考えると、辻褄が合います。

滑車がついている状態だと、この亀裂は見えにくく、ここまで分解してみるまで亀裂にまったく気が付きませんでした。もっと早く気がついていれば。。。と考えるのは止めましょう。

交換作業を続けます。ここまでで古い部品を全部外せましたので、ここからは新しい部品を取り付けていきます。

まず、ノブに滑車を取り付けます。

ネジにワッシャーを入れます。

次に、滑車を入れます。

これをノブに取り付けます。

ここでノブは一旦置いておいて、次は台座とモーターを取り付けます。新しい台座を置いて、下からモーターを合わせます。

言い忘れましたが、取り付けるためのネジは、それぞれ長さが微妙に異なります。古い部品と新しい部品とで、ネジの長さは基本的に一緒です。古い部品を外した後に以下のように置いておくことで、どこにどの長さのネジを取り付ければよいかわかるようになるので、オススメです。

モーターを間違えて落とさないように注意しながら、ネジを締めていきます。

ここで、ギアを外すのを忘れていたので、外しておきます。

ひとつだけ平らなネジがあるので、間違えないように取り付けます。

台座の取り付けができたところで、ノブの取り付けに移りましょう。

ノブを固定するネジの箇所には、ノブが可動するようになるように小さな部品を差し込みます。

きれいにはめ込むことができるはずです。

取り付けイメージを確認しておきましょう。

はい、ここで一つ忘れていることに気が付きました。次に、スプリングガイドとなるネジをノブに取り付けます。

台座側のスプリングガイドのネジを取り付けます。

ノブを固定するネジを、ノブのネジ穴に差し込みます。

そして、台座のネジ穴にうまく合わせて差し込むと共に、スプリングがガイドのネジにうまく合うようにして、取り付けます。

ネジを締めた後に、ギアを元に戻して取り付けます。

チューブの継手を取り付けます。

最後に、青い色のダイヤルを取り付けて、完成です。

できました!黒の筐体にワインレッドが映えますね!

まとめ

さっそく出力してみたのですが、いやはや、明らかに変わりました。

パックリと割れていた押し出しのためのプラスチック部品が、ただでさえ金属に変わりましたので、「そう簡単には破損しなさそうだな」という印象を与えてくれます。っていう「ただの印象かよ!」っていうことだけでなく、フィラメントの押し出し力が明確に強くなったのがわかります。「そういえば買った当時はこんな感じだったなぁ」とふと思い出させるくらい、安定してフィラメントがノズルから出てくるようになりました。変にかすれることもなくなりましたし、出る時は出る、出ない時は出ない、とメリハリがちゃんとつくようにもなりました。

ノブが割れちゃったせいで、まったく力がかかっていなかったんでしょうねー。

おそらく出力が安定したことで、1層目のベッドへの定着も安定したっぽいです。今までは何とか定着させようとして z-offset を限界まで下げていたのですが、そんなことしなくても定着するようになりました。

1層目で出力が止まってしまうこともなく、かすれたり剥がれてしまうこともなく、完璧に出力できるようになりました。BL Touch の恩恵もあり、かなりキレイな1層目の出力ができます。

想像するに、結構早い段階から、つまり「あれ、出力が安定しないな」と思い始めた時点で、おそらくもうノブは割れていたんじゃないかと思います。割れたことにより、フィラメントの押出力が低下して、ノズルにフィラメントがなかなか供給されないまま高温にさらされてしまって焦げ付き、結果チューブが詰まった、というストーリーが妥当かなと思います。いろんなトラブルが連鎖して起きたのかなぁ、と。そして僕の経験値がなく、一つずつトラブルの原因を逆から追っていった結果、根本原因がやっとわかった、っていう感じですね。

同じ機構を採用した3Dプリンタであれば、同様のトラブルが発生するかと思います。そういった際には、「押し出し力」の低下もぜひ疑ってみてください!

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